All The Shades Of Darkened Light – Free Spirit

メロハー

メロディが魂を撃ち抜く、幻のフィンランド産メロディアス・ハード

■知る人ぞ知る、メロディアス・ハードの隠れた至宝

Free Spirit――このバンドの名を聞いてピンとくる人は少ないかもしれない。だが、2014年に発表された彼らの2ndアルバム『All The Shades Of Darkened Light』は、メロディアス・ハード・ロックの真髄を詰め込んだ、まさに“隠れた名盤”である。デビュー作『Pale Sister Of Light』も良作だったが、本作では明らかに楽曲の完成度とメロディの洗練度が飛躍しており、その進化ぶりに心を奪われる。

■80〜90年代の香りと現代的なクオリティの共存

フィンランド出身のバンドでありながら、北欧特有の哀愁や寒々しさはさほど前面には出ていない。むしろ、本作から感じられるのは80〜90年代のアメリカ産メロディアス・ハードの空気感だ。といっても模倣ではなく、そのエッセンスを現代の音像と見事に融合させているのがポイント。

特にアルバム1曲目「Nights Of Paradise」のイントロが鳴った瞬間、心が跳ねるような高揚感を覚えるリスナーは多いはず。エレガントなギターリフとキラキラしたシンセ、そして耳馴染みの良いメロディが一体となり、「ああ、これが聴きたかった」と思わせてくれる。この感覚は、80年代メロハーに青春を捧げた世代には間違いなく刺さる。

■楽曲の粒ぞろい感と、涙腺を刺激するハイライト

アルバムを通して感じるのは、“メロディがすべての核”になっているということ。全曲において、耳をとらえて離さないサビが必ず存在するのだ。どの曲もキャッチーだが、単なるポップさでは終わらない。そこには抒情や情熱、少しの哀愁が絶妙にブレンドされており、アルバム全体が美しい流れを保っている。

とりわけ8曲目「Carry On」は、本作最大のハイライトだろう。もの悲しさを孕んだイントロから、サビにかけて一気に感情が解き放たれるような展開は鳥肌もの。キャッチーでありながら、何とも言えない切なさをまとったこの楽曲は、メロディアス・ハード・バラードの理想形と言っても過言ではない。

■廃盤という悲劇、それでも聴いてほしい理由

本作は日本盤の発売がなく、輸入盤も現在は廃盤。CDとしての入手が非常に困難になっているのが、本当に悔やまれる。ただし、ダウンロードやストリーミングでは聴くことができるという点は救いだ。

それでも、このアルバムはCDで手元に置いておきたくなるタイプの作品だ。ジャケットの美しさ、丁寧に組まれた曲順、アルバム全体が一つの作品として成立している感覚――それらを“所有する”ことの喜びを感じさせてくれる、そんな一枚である。

■終わりに

Free Spiritの『All The Shades Of Darkened Light』は、あまりに過小評価されている傑作だ。大袈裟ではなく、80年代メロハー黄金期の空気を現代に蘇らせたような完成度でありながら、それを独自のスタイルで昇華している。派手な話題性やチャートアクションこそなかったが、だからこそ“知る人ぞ知る”名盤として語り継がれるべきアルバムだ。

いつか再発され、より多くの人の耳に届くことを願ってやまない――それほどまでに、心を動かす力を持った作品である。

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