Before The Bleeding Sun – Eternal Tears Of Sorrow

メロデス

哀しみの旋律が、静かに降り積もる

■北欧の冬を思わせるキーボード、そして荘厳なる進化

Eternal Tears Of Sorrowが2006年にリリースした5thアルバム『Before The Bleeding Sun』は、これまで以上にバンドの個性が明確に結晶化した作品だ。メロディック・デスメタルという枠組みの中で、彼らが大切にしてきた「哀愁」と「美しさ」がより深く、より雄大な音像となって展開されている。

本作最大の特徴は、やはりキーボードの使い方だろう。過去作でもその存在感は際立っていたが、ここではメロディの主軸として、そして楽曲の空気感を支配する要素として、さらに洗練された形で機能している。北欧の冷気をそのまま封じ込めたかのような旋律が、ギターリフと絡み合いながら、静かに、しかし確実にリスナーの感情を揺らしていく。

■メロデスの形式を超えた、美と荘厳の融合

前作『A Virgin And A Whore』で見せた“冬の幻想世界”のような音作りは、本作ではやや抑えめだ。しかし、その代わりにアルバム全体を貫く「荘厳さ」と「哀愁の深度」は格段に増している。ギターリフに引っ張られるメロディック・デスの骨格はそのままに、そこへ重ねられるキーボードの響きは、単なる装飾ではなく“感情の語り部”として機能している。

とくに注目すべきはラストナンバー「Angelheart, Ravenheart」。この曲でバンドは初めてクリーンボイスのコーラスを本格的に導入し、その試みが見事に成功している。凍てつくような音像の中に差し込まれる人間味と温度。これはまさに、Eternal Tears Of Sorrowが“物語を語るバンド”としての次なる段階に踏み出した証と言えるだろう。

■楽曲の核は常にキーボード

アルバムを通して感じられるのは、どの楽曲においても核になっているのはキーボードだということ。もちろんメロデスらしくギターリフが楽曲を引っ張っていくのだが、耳に残るフレーズの多くはキーボードによるものであり、その存在感は圧倒的だ。ヘヴィでありながらどこか繊細、アグレッシブでありながら崇高。この相反する要素を見事に共存させている点が、本作の最も特異で魅力的な部分だ。

■EtoSの完成形、美しきジャケットが語るもの

世間的には、前作『A Virgin And A Whore』のほうが評価されることが多いかもしれない。しかし、本作こそがEternal Tears Of Sorrowの“完成形”であると感じるリスナーは多いはずだ。バンドの持つ哀愁、旋律の美しさ、そして物語性。そのすべてが、このアルバムで有機的に結びついている。

そして忘れてはならないのが、ジャケットアートの美しさ。一見するとシンプルだがどこか不穏な空気を漂わせるその絵は、アルバムの音世界と見事に呼応しており、もしレコード盤でこのアートを飾ることができるなら、それだけでも価値があると感じさせるほどの完成度だ。

■終わりに

『Before The Bleeding Sun』は、単に「メロデスにしては聴きやすい」とか、「キーボードが印象的」といった言葉だけでは語り尽くせない、深く美しい世界を持ったアルバムだ。冷たさと温もり、怒りと静謐、そして光と闇。そのすべてが繊細に交差するこの音楽は、聴き手に“心で感じるメタル”という新たな視座を与えてくれる。メロディック・デスメタルというジャンルの中に、美を見出したい人にこそ、ぜひこの作品を薦めたい。

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