One Night Stand – Casanova

メロハー

哀愁とメロディの魔法が紡ぐ、ヨーロピアン・ハードの傑作

■ヨーロッパの風を感じる哀愁のメロディ

Casanovaの『One Night Stand』は、LAメタル直系のサウンドをベースにしながらも、どこかヨーロッパの湿り気を感じさせる哀愁を帯びたメロディが際立つ作品だ。アメリカのバンドが持つドライで陽気な空気とは一線を画し、センチメンタルで繊細な音の運びは、日本人の琴線に触れる独特の魅力を放っている。これは、Michael Vossの表情豊かなボーカルとStephan Neumeierの泣きのギターが織りなす、感情を呼び覚ます音の化学反応によるものだろう。

■確かなソングライティングに裏打ちされた完成度

アルバム全体を通して、メロディの粒立ちが非常に良い。どの曲にも記憶に残るサビやフレーズがあり、聴き進めるうちに自然と口ずさみたくなる。Michael Vossを中心としたバンドの作曲能力の高さは明らかであり、ただ派手なだけのハードロックではなく、旋律に魂を宿すことの重要性を教えてくれる一作だ。

■浮遊感と哀愁のバランスが絶妙な名曲群

2曲目「Ticket To The Moon」では、どこか夢の中にいるような浮遊感が心地よく、現実の喧騒を忘れさせてくれる。続く3曲目「I’ll Come Runnin’」は、哀愁を湛えながらもキャッチーな展開で、アルバム序盤のハイライトとなる。6曲目「One Of These Days」では、包容力あるメロディがじんわりと心に染み込み、バンドの情感表現の幅の広さを感じさせる。

そして極めつけは、アルバムのラストを飾る11曲目「Seal It With A Kiss」。この楽曲のメロディには、何とも言えない哀愁と美しさが共存しており、まさに“超強力”なラストナンバーだ。バラエティに富んだ楽曲群で構成されたアルバムを聴き終えた後、しみじみと余韻が残るのはこの1曲の存在があってこそだろう。

■誤解か、ゆがんだ妬みか

一部の音楽誌では本作を過小評価するようなレビューがなされていたが、率直に言って理解に苦しむ。ヨーロッパ的な哀愁や情緒に価値を見出せない者か、あるいはその魅力に対する劣等感を刺激されてしまったのかもしれない。しかし、メロディアス・ハードロックを愛するリスナーであれば、このアルバムの美しさに気づかずにはいられないはずだ。

■終わりに

『One Night Stand』は、煌びやかさと情感が共存するメロディアス・ハードの優れた一例であり、ヨーロッパのロックバンドが持つ哀愁の魅力を見事に体現した作品である。派手さだけではなく、心に残る旋律を重んじる人にとって、本作はまさに“知られざる名盤”と言っていい。Casanovaの名前を冠しながらも、軽薄さではなく誠実な情熱が込められた音がここにはある。

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