ポップとプログレが織りなす、異色にして極上の物語音楽
■一度聴いたらクセになる、“ポップ×プログレ”の理想形
スウェーデン出身のプログレッシブ・ロックバンド、A.C.Tが2003年にリリースした3rdアルバム『Last Epic』は、文字通り“最後の叙事詩”と呼ぶにふさわしい、完成度の極めて高いコンセプトアルバムだ。ポップな感触とプログレ特有の展開美を絶妙なバランスで共存させたその音楽性は、一聴すると風変わりでありながら、聴き込むほどに深みを増す。
彼らの過去作――『Today’s Report』『Imaginary Friends』でもそのセンスは光っていたが、本作では物語性と楽曲構成の緻密さが飛躍的に向上。アルバム全体としてのまとまりが明確に感じられる1枚に仕上がっている。
■作品全体に流れる“物語”と“音の抑揚”
『Last Epic』は、いわゆるコンセプトアルバムとしての側面を強く持っており、楽曲それぞれの魅力だけでなく、全体を通して聴いたときの流れや感情の起伏が非常に巧みに設計されている。まさに“起承転結”のあるアルバム構成で、単曲だけを抜き出しても良いが、やはり通しで聴いてこそ、その真価を実感できる。
ポップで明快なメロディ、複雑だが難解になりすぎない展開、そしてときに顔を出すユーモアやシアトリカルな演出。それらがひとつのストーリーとして滑らかに繋がっていく様子は、まさに舞台作品を観ているかのようだ。
■ポップさと感動が交差する
2曲目「Wailings From A Building」では、本作の持つ“ポップさ”が一気に全開になる。明るく軽快なリズムとキャッチーなメロディがリスナーを一気に引き込む、まさに導入として理想的な一曲だ。
そしてアルバムのクライマックスともいえる12曲目「The Effect」では、A.C.T史上初めて女性ボーカルをフィーチャー。これが驚くほど効果的に作用し、既存のバンドサウンドに新鮮な風を吹き込んでいる。サウンドの高揚感が極限に達し、聴き手の感情を強く揺さぶる名シーンのような1曲だ。
■通して聴くことで得られる、圧倒的な満足感
『Last Epic』は、楽曲単位でも魅力的だが、アルバムとして通して聴いたときにこそ最大の感動が得られる作品だ。細やかに配置された楽曲の流れ、感情を揺さぶる抑揚、そして最後に訪れるカタルシス。まるで一本の音楽劇を体験したような充実感が残る。
単なるプログレでも、単なるポップでもない。A.C.Tにしか作れないこの“物語音楽”は、アルバム全体を通して聴くことで、真に心に残る芸術作品へと昇華する。
■終わりに
A.C.Tの『Last Epic』は、“ポップでありながらプログレッシブ”という、矛盾しそうで見事に成立している希少な作品だ。テクニカルでありながら親しみやすく、構築的でありながら情感豊か――このバランス感覚こそが彼らの魅力であり、本作はその到達点のひとつである。
アルバムというフォーマットの醍醐味を存分に味わえる傑作として、ぜひ静かに、じっくりと、通しで聴いてみてほしい。何度聴いても新たな発見があるはずだ。


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